砂時計の仕事はどのようにしますか?
×Bチャンネル× : 砂時計 4P目
場所で話をするのも医師たちだけならよくあることだったが、
「秋日、鍵をかけてくれるか?」
最後に入ってきた秋日に父は声を掛る、その言葉にはいとだけ答えドアを閉じ鍵をした。
朝の会議でもドアを閉じることはよくあることだが、すぐに皆が出れるように鍵を開けている事がほとんどな場所で鍵を閉めるという事は少なからずあまり聞かれていい話で無い事が悟れる。
患者と話すために3,3で向き合うように配置された椅子に分かれて座る高石と父、そんな様子を見ながら秋日は父の横に腰を掛け、高石の持ってきたファイルに視線をやるが、そのファイルは開かれる動きが無い。
「院長、本当に彼をアキに任せるのですか?」
その言葉に高石に目を向ける秋日に気付き高石はフォローの言葉を掛けようと口を開く
「秋日と澁谷くんには今日ここに来る前に挨拶させてある。」
フォローの言葉を掛けてくれようとした高石の言葉を父が遮り、挨拶した事を高石に知らせ、沈黙が走り少し間を開け
「な、挨拶させたのですか?じゃあアキは病気の事知ってるのという事ですよね。」
「え、病気って足の神経の損傷とかでは無いのですか?」
あ、と秋日は口を押さえる、この空気で言って良い言葉ではないと瞬時に悟り高石と父の顔を交互に見る、そこには冷静に座る父とこちらを見て目を開ききって驚いている高石の姿が秋日の瞳に映りこんだ。居場所が奪われるような心境の秋日に高石はトドメかと言わんばかりの大きなため息をはぁっと吐く。
口を押さえていた手を退け
「僕では、やはり力不足ですよね。」
落ち込む秋日に違うと高石はすぐに否定し、落胆させていた身体を起こしてファイルを開きだす、そこには澁谷太陽の今迄の診察記録が事細かに記されていた。
そのファイルから一番新しい診察内容と病気を見ようとファイルに手をかけようとする秋日の行動を見ていた父が秋日、と声をかけて来父の方へ顔を向けると
「筋委縮性側索硬化症、俗にASLという病気は聞いたことは有るだろう。それと近い症状が澁谷くんに見られるのだよ。」
その父の言葉に秋日は言葉を失い、ファイルに視線を落とす。だってその病気の名を知らないはずがない、その病気は神経科で最も難病といわれる一種、そう治らない病気。
澁谷が足を引きずっていたのは初期症状で、まだそれほどは深刻化していないとしても、いずれは身体が自由に動かなくなるのは目に見えている。可能性は低いと言えども、もし呼吸運動機能まで進行すれば、死を持つ病気だった、秋日の最初の担当としては途轍もなく大きな仕事だという事が初めて分かった。
言葉を失う秋日に
「今日挨拶させておいて何だが、嫌なら降りてくれても構わん、ただ秋日に嫌な思いをさせたくて担当にしたわけではない。澁谷くんには歳の近い子供は下しかいないのだよ。
だから、秋日に話し相手だけでもっと思ってな。」……
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